アルマイト処理の概要と特徴
身近な生活用品から最先端の工業製品まで今や幅広い分野で活用されているアルミニウム。その品質を左右するのがアルマイト処理と呼ばれる表面処理加工です。こちらでは、大阪をはじめ関西圏でアルマイト加工を専門的に手がけてきた東信工業が、アルマイト処理のアウトラインとその主要な特徴についてご紹介します。
アルマイト処理とは?
アルミニウムは軽くて加工のしやすい金属であることから幅広い分野で活用されています。また空気中の酸素と結びついて表面に薄い酸化皮膜を形成するので鉄に比べ錆びにくいなどの優れた特徴を持っています。しかし一方で、軟らかい素材のため表面が傷つきやすく、環境によっては腐食が進む場合もあり、そのままで製品化しにくいのが難点。その欠点を補うための加工がアルマイト処理です。これは、アルミニウムを電解液中で通電することで表面を強制的に酸化させ、自然の状態よりも厚く丈夫な酸化皮膜でコーティングする技術。こうすることで耐腐食性や耐摩耗性に優れたアルミニウム材料になります。
アルマイト処理の過程
- アルミ製品を硫酸やシュウ酸など電解液の中に浸します。
- 製品を固定する治具にプラス電極をつなぎ、電流を流します。
- 製品と陰極の間で電流が流れることで電気分解が進み、アルミニウムの表面に酸化皮膜が形成されます。
アルマイト処理の特性
アルミニウムをアルマイト処理した場合に、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下では主なものを列挙しています。
耐摩耗性向上 | 未加工の場合に比べ表面の硬度が格段に高くなり、傷や摩耗にも強くなります。 |
---|---|
耐腐蝕性向上 | アルミニウムはイオン化傾向の高い金属で、水や酸素をはじめさまざまな化学物質と容易に反応するため、腐食や変色を起こしやすい欠点があります。アルマイト加工を施すことで化学的に安定するため耐腐食性が向上します。 |
絶縁性の向上 | アルミニウムは金属ですが、アルマイト処理によって表面に形成された酸化皮膜は電流を通さず、優れた絶縁性を発揮します。 |
熱伝導率の向上 | 表面の酸化皮膜があるため、アルマイト処理を施したアルミニウムは未加工のものと比べ熱伝導率は約3分の1と低くなります。また、遠赤外線の放射特性も高くなります。 |
美観向上 | アルマイト処理でできた酸化皮膜は無色透明なためアルミニウムの質感、素材感を損ないません。また、染料を用いることで酸化皮膜の上から着色ができ、さまざまな色の製品を作ることが可能です。 |
アルミニウムの特長
軽くて強い
アルミニウムの比重は鉄や銅と比べ約3分の1。軽い上に単位あたりの強度に優れるため自動車の車体など構造材にも用いられています。
優れた加工性
塑性加工がしやすく、さまざまな形状に成形できるのもアルミニウムのメリット。アルミホイルなどの薄膜から複雑な形状をしたダイカスト製品まで幅広い用途に応用できます。
光や熱をよく反射する
アルミニウムは、光や熱、電磁波などをよく反射する特性があり、暖房機器や照明器具の反射板などによく用いられます。
熱や電気をよく通す
熱伝導率は鉄の3倍、電気伝導率は銅の2倍と優れた性質を誇ります。
優れた耐蝕性
アルミニウムは自然の状態でも空気中の酸素と結合して表面に酸化皮膜を形成します。これがサビ、腐食を防ぎます。
磁化しない
それ自体が磁化せず、また磁力線の影響も受けない素材なので、船の磁気コンパスやコンピュータ用磁気ディスクなどに多く用いられています。
優れた低温特性
低温環境下でも物性が安定しているため、宇宙開発や液化天然ガスなどの貯蔵によく用いられています。
リサイクルが容易
新たに地金を作る場合の3%のエネルギーで再利用ができる優れた資源。加工のしやすさもリサイクルに一役買っています。
アルミニウム加工の種類
- マシニング加工
- 対象金属を固定し、切削マシンの刃物が動く事で加工がおこなわれる。
精密加工が多く、加工コストも高い部類に入る。 - 旋盤加工
- 切削の刃が固定されていて、切削対象金属を動かす事で加工がおこなわれる。
※マシニング加工と旋盤加工の両要素を含むのが「複合機」による加工。 - 型材加工
- 金型を使い、ところてん方式で押し出す。いわゆる押し出し加工。
- 板材加工
- 「プレス加工」「絞り加工」「スピニング加工」などの事。
- 鋳造
- 「ダイキャスト」と「鋳物」の事。
- 鍛造
- 金属をハンマーで叩いて加工する。
主なアルミニウム合金のアルマイト処理性
JIS記号で示される主なアルミニウム合金のアルマイト処理特性についてご紹介します。
凡例) Aとくに優れている/B優れている/C可能/D困難
JIS記号 | アルマイト処理の目的 |
---|
耐蝕性 | 染色性 | 耐摩耗性 | |
---|---|---|---|
A1080 | A | A | A |
A1050 | A | A | A |
A1100 | A | A | A |
A2011 | C | C | C |
A2017 | C | C | C |
A2024 | C | C | C |
A3003 | A | B | A |
A3004 | A | B | A |
A4043 | B | B | B |
A5005 | A | A | A |
A5052 | A | A | A |
A5056 | A | A | A |
A5083 | A | A | A |
5N01 | A | A | A |
A6061 | A | A | A |
A6063 | A | A | A |
6N01 | A | A | A |
A7075 | B | B | B |
7N01 | B | B | D |
AC1B | C | C | C |
AC2A | C | D | C |
AC3A | B | D | D |
AC4B | C | D | C |
AC4C | B | D | C |
AC7A | A | A | A |
AC8A | C | D | C |
AC9A | C | D | C |
ADC1 | C | D | C |
ADC3 | B | D | B |
ADC5 | A | A | A |
ADC6 | A | B | A |
ADC10 | C | D | C |
ADC12 | C | D | C |